Episode0.1 街道を征く・・・鳥天国・えひめのコケコッコ街道! Cock-a-Doodle-Do Road in Ehime(序章)

愛媛県には、ものづくり地域である東予地域を中心に、

独特の鳥食文化があふれる「えひめコケコッコ街道」が存在する。


戦後、労働者の呑みニュケーションをきっかけに、居酒屋や食堂で生まれた

鳥食文化は、今やスーパーや家庭に浸透。

女性や子どもたちまで大好きなご当地鳥料理へと進化している。


その1つが、四国中央市の焼いてない焼き鳥。


愛媛県の東予地域は、鶏のから揚げをこよなく愛するケンミンが多い。

まず、四国中央市(しこちゅー)の焼き鳥屋はちょっと変わっている。


「焼き鳥屋」の看板の店に入って、メニューにある、「ずり(すなぎも)」「きも」「鶏足」などを注文すると、

串に刺して焼いた、いわゆる「串焼きのやきとり」ではなく、揚げた鶏が出てくる。

ずり.jpg


(ずり)




足(もも)を注文すると、これが出てくる。



あわおどり~吟醸 004.jpg
(揚げ足トリ・・・しこちゅーチキンとも呼ばれる)





最近、メニューに「串焼き」と書かれて、普通の焼鳥を出す店も増えてきたが、それは、県外のお客さんに、

「焼いた鶏を出してほしい」と言われたかららしい。



手羽を注文すると、手羽元と手羽先がつながった、ジャンボなフライが出てくる。

とり好きの客は、「手・手・足・足・ずり・きも・ざんぎ」を注文して、

「鶏1羽喰たどー!」というのが通の楽しみ方。







四国中央市の焼鳥が揚げ鳥になった理由には諸説あるが、

串に刺して焼くより、ぶつ切りにして揚げたほうが早くて簡単だったというのが有力説だろう。

いかにも、愛媛県東予東部のケンミンの、

「たたわしい(しこちゅー弁)、「あせろしい(新居浜弁)、いらち(今治弁)」=「せっかち」

な気性を現している。



二つ目の鶏食文化が、ザンキ、ザンギ、センザンキ。

新居浜市では、味付け鶏に米粉や片栗粉などをまぶして揚げたものをザンキと呼ぶ。

新居浜市のザンキを始めとして、四国中央市は、ザンギ、今治市ではセンザンキと呼び、

ただの唐揚げとは区別している。



新居浜市のザンキという呼び名は、昔、地元の中国人労働者が鶏のぶつ切りを揚げており、

それを見た新居浜人が「それは何か?」と訊いたところ、「ザーチー(炸鶏/中国語で鶏のぶつ切り料理)」と

答えたのが語源と言われている。


ザーチー → ザンキ


ということだろう。



一方で、今治市のセンザンキは、江戸時代に今治市に住んでいた千(せん)さんという人が、

山でキジを捕まえ、揚げ鳥にしたことから付いた「千さんキジ」という呼び名が、

「センザンキ」になったという説もあるが、

エンザーチー(軟炸鶏/骨付き鶏のから揚げ)や、チンザーチー(清炸鶏/骨無し鶏のから揚げ)という

中国語が語源という方が正解だと思う。


四国中央市のザンギは、今治の焼き鳥屋で修行した人が、四国中央市で店を開き、

その時に「センザンキ」とせず「ザンギ」と呼んだのが始まりとされている。



松葉屋 ざく ざんき 015.jpg

(新居浜のザンキ)



鶏を揚げたものをザンキと呼ぶ地域は、愛媛の東予地域以外にも存在する。

何故か、北海道の一部(釧路、室蘭など)、山形県の一部(酒田市、鶴岡市)の飛び地でも、

ザンギ、ザンキという呼び方が存在している。


なぜ、国内の飛び地で同じように鶏の揚物を「ザンキ」と呼ぶのか。

これは、北前船の寄港による伝播であるなどの説があるが、未だなぞは多い。

ここにも地域の食のストーリーが隠されているように思われる。


第2話に続く。


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